8月のいただきもの&読書

今月は経済祭りでした。どうもありがとうございます。

経済成長って何で必要なんだろう? (SYNODOS READINGS)
芹沢 一也 荻上 チキ 飯田 泰之 岡田 靖 赤木 智弘 湯浅 誠
光文社
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脱貧困の経済学-日本はまだ変えられる
飯田泰之 雨宮処凛
自由国民社
売り上げランキング: 1257

大活躍中の飯田君による経済成長しようぜ本2冊。彼の場の空気を読んで自説に引き込む力とクリアカットな説明(クリアすぎて逆に引っかかることもあるけど)で、うまい具合に「貧困と自意識の連鎖」を断ち切るものになっていると思う。飯田君のような人がひとりいるだけで、「お前の言ってることは自意識の話じゃないか」というしょーもなくジカジョーな批判が無効化されるのでとても助かる。何度も言ってることだけど、政策と自意識のリンクを断ち切って議論することが一番大事なのであり、そのために必要なのは、よき政策の議論と、よき自意識の議論の存在なのだ。言い換えれば、これを経て雨宮さんや湯浅さんが1ミリたりともブレないこと、それによっていままで築いた信頼の上に活動を続けることが大事なのだと思う。

関係ないけど、実は飯田君の醍醐味は、相続税100パーセントなど、突如としてリバタリアン的主張が挟み込まれるところにあると思う。僕は世代間の資源配分の不均等と、世代間の感情的対立を混同させるのには反対だし、それこそ有吉よろしく先輩転がしやった方が引っ張れる金は増えると思っているのだけど、そう思わない人がこの世にたくさんいることは理解はできる。というわけで次は是非ホリエモンとの対談本を作ってもらいたいなあと。

危機の経済政策―なぜ起きたのか、何を学ぶのか
若田部 昌澄
日本評論社
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若田部さんよりご恵投。お仕事でご一緒させていただいてたときに聞いてた話がちゃんと活字で読めると、いっそう理解が深まる。「100年に一度」とか騒がれる昨今だけに、過去の経済危機とその原因、対策とその効果について知っておくことは、一般の人にとっても大事。いやあもちろん、そういうエクスキューズによって首をくくらずに済んだ人はいるかもしれないし、何度やっても学ばない、ということだけが一貫しているのがわが国の政策では、とは思わなくもないのだけど。

それにしても本書の原稿を連載していた経済セミナーしかり、どうして経済学には(素人エコノミストも含め)色んな人が書ける場があるのに、社会学にはないのだろうね、と思って気付いたのは、そもそも社会学ってそういう場がない人たちが作ったものだけに、対象の曖昧さに反して方法論を厳密にしないと科学じゃない、というところがあって、あまり場を広げられないのだろうな、ということ。社会の問題解決に役立つことを言ってれば、方法論的厳密さよりスピード感を問うた方がいいぜ、というのを抑制する戦略は、学的な権威の調達を目標としていた時代には意味があったのかもしれないけど、いまじゃマイナスになってるところもあるんじゃないかな。

サイバービア 〜電脳郊外が“あなた”を変える
ジェイムス ハーキン
日本放送出版協会
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期待したほど面白くはなかったけど、本書のタイトルでもある「サイバービア」(Syburbia=Cyberspace+Suburbia)という語は、ちょっとだけ気に入った。サイバービアとは、人間が電子の海に溺れていく、いわゆるサイバースペースのイメージの手前にある、現実の人生に随伴するオンライン生活のことらしい。本書ではセカンドライフの話が出てくるが、日本だと2ちゃんねるやmixi、はてなや大手小町など、要するに人の集まるウェブ上の「場」ということになるだろう。

つまんないな、と思うのは、ネットワーク上で起きているこうした生活は、むろん人々の集合的な行動によって可能になっているし、それが文化にまで発展することもあるのだけれど、同時にそれを「操作」する人間の、ごく当たり前の生理的・心理的反応から生じたものでもあるということが見過ごされること――言い換えれば、サイバービア的な生活こそがウェブ的なコミュニケーションの一般的スタイルだということが分かってないってことだ。他方で面白いのは、そこでの集まりが、マクルーハン的な「村」でも、ラインゴールド的な「共同体」でもなく、他人同士が寄り集まってできる「郊外」のイメージで描かれていることだろう。サイバー・アナーキストたちは人間本性の「信頼」に基づく行動をウェブに期待するけど、むしろ大事なのは、他人同士を繋ぐ明確な関係――ポイントを含むお金のやりとりだったりするのじゃないか。それこそQ&A掲示板のように。

あと先月いただいた分で、下記を挙げるのを忘れていたので追加。

「空気」と「世間」 (講談社現代新書)
鴻上尚史
講談社
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