4月のいただきもの

雑記

今月も何冊か本をいただきました。いただきものを紹介しているうちにいただきものが増えるポジティブフィードバック効果ですね。ありがたいことです。

イマココ――渡り鳥からグーグル・アースまで、空間認知の科学
コリン・エラード Colin Ellard
早川書房
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「アーキテクチャ」に関する解説を濱野智史君が書いているので、それ系の本かと思ったら、全体的には空間認識に関わる認知心理学の本で、その幅も動物や昆虫の空間把握から、住居の設計、サイバースペースの設計と、とにかく幅広い。確かにどんなものを設計するにも、こうした心理学的、あるいは認知科学的知識は必須だと思っているので、アーティスト的な「カン」が重んじられているように見える日本のデザイン業界には、ぜひ必要な本だと思うけれど……哲学・思想としてアーキテクチャを論じたい人に直接役立つかどうかは疑問。濱野君の解説はよくまとまっていて読みやすかった。

神話が考える ネットワーク社会の文化論
福嶋亮大
青土社
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いい意味で肩に力の入った評論集。宮台さんの『サブカルチャー神話解体』とは、サブカルチャーに関する大きな物語を統計的に解体するという試みだったはずだが、そうして分解されたトライブがめいめいに自分のトライブ性を自覚し、あるいは無自覚なコミュニケーションによって接続されるとき、そこには「信仰」とも「神話」とも呼べる振る舞いが生まれる。

『遠野物語』から東方やハルヒまでをフラットに分解し再接続し、それらを現代的なコミュニケーションのありように落とし込んで批評する著者の手つきは、あざやかというよりは「よく勉強しているなあ」と感心するほかないレベルのもので、また、純粋に知的な関心を追求する姿勢は、「役に立たないものは役に立たない」という00年代的なプラグマティズムを脱臼させるに足る――そしてそれは10年代のスタンダードになる――ものだと思う。

一方で、神話化が進む現代についての評価やスタンスを決めかねている感も、いまの状況を把握していれば否応なく出てくるよなあと思う。コミュニケーションのループが小さくなっていくことを歓迎はできないが、大きな物語の回復によってループの外側へと人々を追い立てていく権威主義が支持されるとも思えない現代では、ポップさと小難しさの絶妙なバランスの中で、判断を宙づりにするほかない。「その先」の文体がこれからの著者に編み出せるかどうかで、10年代の風景も多少は変わるかもしれない。

社会ネットワークのリサーチ・メソッド―「つながり」を調査する
平松 闊 宮垣 元 星 敦士 鵜飼 孝造
ミネルヴァ書房
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複雑な数理モデルが駆使されることもあるパーソナル・ネットワーク研究の分野では珍しい、調査方法や調査票の作り方から丁寧に解説した教科書。もちろん大学の講義で使用することを目的にしているので、これだけ読んで分かった気になっても意味がないし、そのつもりもないのだけど、この分野の先行研究のまとめや、「なぜパーソナル・ネットワークについて調べるのか」という基本のところで理解が進んだので大変助かったというお話。

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