正月だからタスク管理を考える

雑記

タスク管理という奴は、それだけで本が何冊もあるくらい奥の深いものなのだけど、きちんとした形で始めるには色々と困難もつきまとう。一番やっかいなのは、「多数のタスクを抱えている」からこそタスク管理を始めたいのに、忙しすぎてそもそもタスク管理の方法について学んだり工夫したりする余裕がないということだ。正直、GTDの本なんか読んでる暇があったら仕事するよ、という人も多いと思う。

お正月というのはそういう意味で、タスク管理を学んだり始めたりするのにとてもいい時期だ。まだ12月30何日あたりをうろうろしている人もいるだろうけど、実家でいつまでもぬくぬく休んでいたいという人もいるんじゃないかと思う。そこで今回は、自分がタスク管理を見直す時期だったこともあって、「誰にどんなタスク管理が向いているのか」について整理してみようと思う(ちなみに僕は、毎日色んな仕事をこなしてはいるけど、タスク管理の専門家でもなんでもないので、そういう意見が聞きたい人は「戻る」ボタンを押してもう一度Googleで検索だ)。

タスク管理と「時間割」の違い

まず、タスク管理と「予定表」の違いを押さえておく必要がある。特に学生までの時分では、タスクとはすなわち予定のことだった人が多いと思う。授業の時間割だとか、レポートの提出締切だとか。夏休みの一日の予定を円グラフにしたなんて人もいるだろう。あれは簡単にいうと「何かをする時間」だけを管理しているもので、要するにその時間に決め(られ)たことを実行すればいいわけだから、タスク管理としては初歩の部類だ。

こういう管理ができるのは、タスクの先が一元化されている場合に限られる。学校だったら教室という場所に行く、9月1日に夏休みの宿題をまとめて提出する、など。でも、大きくなってくるとそういうわけにはいかない。学生だって勉強とサークルとバイトを鼎立させないといけないし、会社に入れば複数の取引先を相手に、微妙に異なる仕事をしなければならない。

もうひとつ違うのは、「仕事をしているとき」は「締切」や「実行日」ではないことが多いということだ。夏休みの宿題は、最初の一週間で終わらせようと、最後の三日で慌ててやろうと、夏休み明けに提出すればそれでよかった。夏休みをどう過ごそうがあとは自由だ。でも大人の仕事には、きちんと質に対する評価が付く。時間をかければいいものができるわけじゃないけど、やっつけ仕事で提出だけすればいいというものではない。そのため、「どのくらいの時間をかけてそのタスクに取り組むか」の見積もりができないと、結局は終わらない仕事を抱えて徹夜続きでパンク、なんてことになりかねない。たとえ締切をちゃんと覚えていたとしてもだ。

タスク管理の三つの要素

ということは、タスク管理をするためには、子供の頃の「予定表」に加えて、作業時間の見積もりを行う必要がある。タスク管理の世界(?)では、これはたいてい「進捗」と呼ばれている。いまその仕事が何パーセントくらいの達成率なのかを管理することで、「あとどのくらいの時間が必要か」を推し量るのだ。

当たり前だけど、進捗や残りの作業時間は人によって異なる。レポートなら、ワードを前にうんうん悩むのが大部分の時間を占める人もいれば、じっくりと図書館で下調べをするのに時間をかける人もいる。教科書的にはそこで「図書館で資料探し」と「本文執筆」にタスクを分けて、それぞれの予定を細かく管理せよ、と書いてあるのだけど、正直お勧めしない。細かすぎても管理が複雑になるし、そもそもそんな簡単に分割できないタスクも多いからだ。

なにより、こうした複雑な管理は、タスク管理の三つ目の要素「余裕(バッファ)」をコントロールすることを難しくする。綿密に立てられた予定は、それを眺めているだけならうっとりできるくらい美しいこともあるけれど、世の中はまず予定通りには進まない。風邪をひいてしまったり、恋人と喧嘩してやる気を失ったり、定期券を落として遺失物届け所に行かなきゃいけなくなったりするものだ。

「予定」「進捗」に加えて、この「余裕」を管理できるかどうかで、タスク管理が役に立つものになるか、時間の無駄で終わるかが別れる。言っておくけど、タスク管理は所詮タスクを完了させるための手段なので、仕事さえ終わればタスク管理なんかできなくてもいい。ただ、どのくらいの余裕で仕事を進めるかって、文字通りワークライフバランスに関わってくるわけで、仕事一筋に生きたいと思わない人ほど、意識した方がいいんじゃないかと思う。

どこまでを自分の頭に入れるか

さて、ここからは具体的な手段の話だ。タスク管理といっても、紙の手帳を使う方法から、流行のウェブサービスを使うものまで多様だ。ここでは、そうした多様な手段の中から、どんな方法が向いているのかについて判断する基準を挙げてみたい。

(1) 手書きの方が馴染むかどうか?
これはもう個人の問題なのだけど、世の中には「手書きの方が早い」人もいれば、「PCのキーボードの方が早い」人もいる。僕は使い慣れたキーボードなら、人の会話の要約くらいはリアルタイムで議事録化できるレベルのものが作れる。でも手書きの方がいいという人にとって、使い込んだ手帳やノートは、どんなアプリケーションやサービスもかなわないユーティリティを有している。もちろん、ケータイでの入力が最速だという場合もあるだろう。なんにせよ、入力するのに一番ストレスのない方法を選ぶべきだ。

(2) 他の人との共同作業が多いか?
人は誰も一人では生きられない。仕事も同じだ。そして他の人との共同作業は、自分一人ではなし得なかった成果を可能にすることもあるけれど、誰か一人のせいで足を引っ張られることもある。他の誰かの仕事があがらないと自分の仕事が進まないような共同作業が中心の仕事をしている場合、タスク管理も必然的に進捗や余裕の管理の方が大事になる。紙の手帳に毎日、メンバーの進捗状況をメモしていってもいいけど、やっぱりこういうときはPC上での管理が便利だ。

(3) いつも決まった場所で仕事をしているか?
出勤して、朝から晩まで自分専用のPCの前にいられる人は幸いである。でも、取引先への交渉、営業、取材、リサーチなど、オフィスを離れて仕事をすることは多い。帰社してメールをチェックするまで、ほぼ一日PCを触らないという人にとって、パソコンに入れた進捗管理表なんてほとんど役に立たない。こういう人は紙の手帳を持ち歩くか、ケータイからでもチェックできるウェブベースのサービスを利用すべきだ。

そして、どんなツールを選ぶにしても気をつけないといけないことがある。それは、ツールは結局のところ自分の頭をサポートするものでしかなく、頭の中身をすべて写し取ることは(いまのところ)できないということだ。問題は、どこまでを自分の頭に入れておくかという点にある。予定表だけ見て、現在進行中のタスクと進捗を挙げられるくらい性能のいい脳じゃないとしても、いちいちメモをとる前に「このメールを書いたら次はこっちに電話」くらいのことは覚えていられるはずだ(という僕はよく忘れるけど)。また、ものの1分で済む仕事のためにタスク管理サービスを5分眺め続けるなんて無駄の極みだ。ツールは万能じゃない。必要なことだけを入力し、それを使いこなす方に頭をチューニングできないと、結局は山積みのタスクの前で途方に暮れるだけだろう。

僕の場合、タスクはできる限りおおざっぱに書く、移動ないし提出物のあるタスクに限るという使い方が主であり、また色んな場所で仕事をすることが多いので、⑴ シンプルにタスクが登録できること、⑵ 多くのデバイスに対応していること、という条件を満たすものとして、いまのところWunderlistをウェブ、iPad、Androidのスマホで利用している。iPhoneアプリとしては「次にすること」が秀逸だった。

正解なんてものはないし、特にPCやウェブのツールは日々進化する。だから「何を使うか」(に伴う「どう使うか」)という部分にフォーカスした話をしても意味のないところがある。その一方で、どんなツールが向いているかという話は、自分のライフスタイルや職場が大きく変わらない限りは有効なのだ。時間にちょっと余裕のある正月だからこそ、自分のワークスタイルを見直してみるといいんじゃないか。

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