スマホと読書時間には関係が見られないという話

たまにシニアの経営層の多い会合に出ると、「スマホ悪玉論」がナチュラルに飛び出してきてはっとさせられることがある。いわく、最近の若者は画面ばかり見て生命の重さを知らない、気概が足りない、軟弱だ、などなど。そういうことをおっしゃってる目の前で、こちらがタブレットに発言の記録をとっているのを目にしてかどうかは知らないけど、やはり不気味に映るのだろうなと思う。もちろんそういう方々も日本の輸出を支えているのがスマホ向け半導体であることはご存知だろうから、まあシニアの内輪向けリップサービスみたいなものだとは思うけど、逆に言えばそのくらい「ウケる」テーマなのだろう。

という中で、26日にリリースされた全国大学生活協同組合連合会の「学生生活実態調査の概要報告」のデータが注目を集めている。そのほとんどが「読書時間ゼロ」の大学生が半数を超えているという点に注目している。

大学生、読書時間ゼロが過半数 「読む」層は時間延びる:朝日新聞デジタル

大学生「読書時間ゼロ」半数超 実態調査で初  :日本経済新聞

 中日新聞 CHUNICHI Web 
大学生の5割超、読書時間がゼロ 「本離れ」が顕著
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2018022601001612.html
 全国大学生協連(東京)は26日、1日の読書時間について大学生の53%が「ゼロ」と回答したとの調査結果を発表した。半数を超えたのは、調査に読書時間の項目が入った2004年以降初めて。「本離れ」が若い世代で進行している実態が明確になり、アルバイトを...
大学生の5割超、読書時間がゼロ 「本離れ」が顕著:話題のニュース:中日新聞(CHUNICHI Web)

「読書時間ゼロ」大学生の53% 原因はスマホではなく「高校までの読書習慣」 | キャリコネニュース

内容的に一番くわしいのはキャリコネニュースだが、いずれの記事も見出しでは「読書時間ゼロ」の学生が半数を超えるという点を強調している。ただ元のリリースを見ると分かるように、この調査は大学生の仕送り額や勉強時間などの生活実態について多角的に調査したものであり、読書だけを調査したものではない。あくまでニュースとして限られたスペースに話題を切り取るときに強調されている点がその部分であるというだけだ。

さらにこのデータについては日経の記事で「読書には電子書籍も含む」ことが示されているが、こちらは元のリリースにはない情報だ。その上でリリースの文末では、浜嶋幸司同志社大准教授による参考情報として、過去5年のデータの分析によって、読書時間とスマホの利用時間の間に関係が見られないこと、さらに読書時間と勉強時間の間にも強い関係は見られないことが明らかにされている。読書時間に影響しているのは他の時間ではないということからも、読書時間の減少は「もともと本を読まない層」の増加に関係していることが読み取れる。またそうした層じたいが時間の経過とともに増加していることも示されている。

上に挙げたいずれの記事も、問題の本質がスマホでないことにやや言及はしているものの、ここまでの情報を盛り込めてはいない。記事執筆者に言わせればそれは「紙面の限界」なのだろうけど、そこで何をピックアップしてどう強調するかというのは編集権の範囲であるわけだから、どこまで限界に挑戦したのかについては疑問を感じる。

分析からは、少なくとも読書時間にスマホが与える直接的な影響は見られなかった。間接的な影響についてはさらに分析する必要があることも示されているし、実際になんらかの関係を見出すことはできそうだが、現時点でここから導き出せるインプリケーションないし対策としては、早い段階から電子書籍端末(またはアプリ)を利用して、多くの書籍に触れる機会を増やすことも、読書離れを食い止める効果を持ちそうだということだ。印象に基づくスマホ悪玉論、紙の本への回帰は、個人的な好みの問題としては好きにすればいいのだけど、それがものごとを読み解くときのバイアスにならないように気をつけることもまた、「読書」がもたらすよい影響のひとつなのではないだろうか。

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