ひらめきのことば探し

雑記

47歳の誕生日は、この数年でもなかったくらい、複雑な心境だった。自分の人生を振り返ると5年おきくらいに大きな転機が訪れるのだけれど、昨年秋から今年にかけての半年くらいの間、「もうこれまでの自分とは考え方も、やり方も変えなければいけない」という確信が日に日に強くなり、その新しい姿を求めて悩み、考え抜く時間がすごく多かったと思う。

実際、この春からとある企業の顧問に就任したり、その他にも新しいプロジェクトが始まったりしたこともあって、その「転機」は頭の中だけのことではなく、縁あって実際的なこととしても起きたのだけれど、それによって、これまでの自分の価値観や考え方の中にあった迷いや甘さのようなものを捨てなければいけなくなっている。

LifeのPodcastでも話したことだけれど、特にこの半年は、スピリチュアルな言葉を参考にすることが多かった。オカルトという意味ではない。そもそも合理的に考えたり解釈したりすることが不可能で、かつ個人的な体験でしかない「人生の転機」のようなものをどう受け止めるか。それは人によってはより実際的な自己啓発のことばなのかもしれないけれど、自分の場合は、世の中の大きな動きとか、世相の変化とか、そういうこととリンクして考えるほうが納得しやすい。占星術のことばなんかに影響を受けて、もしかすると自分の行動はこういうふうに解釈できるのじゃないか、なんてことをよく考えた。

別に惑星が星座を移動したから世の中が変わるなんてことはない。それを信じているとかそういうことではなくて、その状況に対して、人はこのように考えるのではないか、それはこう解釈できるのではないか、そんなところに強く惹かれていた。そのほかにはアートや表現にも触れることが多かったと思う。整序されたロジックとは異なる水準で「こういう世界もあるのではないか」「世界はこうも見えるのではないか」というインスピレーションを刺激される表現が好きだった。自分でもたくさん写真を撮りに行った。

撮影の旅に出ると、ロジカルな頭を使わない分、普段は抑えている余計なことばかり考えてしまう。過去の失敗や、人を傷つけたことや、いまも至らないままのこと。それらがすべて過去になったとき、人が再び歩き出すこと。長い時間の中で人の生きざまは常ならぬことばかりで、いまこの瞬間に何を考えようと、その無常の流れは変わらないというのに、そういう雑念にとらわれて、それから逃れるためにカメラを構えるような瞬間が何度もやってくる。

正直なところ、もういつ死んでもいいなと思う。若い頃は、この眼の前の大きな目標が片付くまでは死ねない、そこまでは走りきろうと思うことが多かった。数年間の嵐のような努力を経て、自分が力を振るえば振るっただけ、きちんと成果を出せる、そんな手応えがたくさんあった。たとえば昨年は、自分の所属学部の広報・宣伝活動に力を入れたのだけど、ほぼ見通していたレベルで数値目標を達成することができた。がんばれば結果が出るというのはモチベーションになるけれど、スイッチを押したらブザーが鳴るのと同じことじゃないのか、と思う自分もいる。

世相に対する無力感もある。画面の中で踊ることばは、どうしても人の足を引っ張るようなものばかりで、自分で行動するわけでもない人たちが投げかける外野の野次ばかりに見えてしまう。自分が専門的に突き詰めて考えていること、その中である程度の結論を得ているようなことであっても、なかなか世の中には共有されないし、それが届く範囲も随分と狭くなったように思う。だからというわけじゃないけど、あまり人に対してロジカルにものを伝えたいとも思えなくなりつつある。

一方で、体はすこぶる元気だ。コロナ禍で体を鍛えたこともあって、おそらく30代以降でピークというくらいに活力に満ちていて、衰えを感じるどころか若返っているような感覚すらある。何かができなくなっていくほど、人はそこにしがみつこうとするものなのかもしれない。僕にはそれがないから、いつでもすべてを手放せるような気がしてしまう。ありがたいことではあるけれど、おかげで悩みの質も成熟できていない。普通のアラフィフはもっと健康とか老後とか年金とかそういうことを心配すべきなのだ。

言ってしまえば、ようやく27歳くらいの気分だと思う。27クラブに入れなかったロックンローラーが、さあどうやって大人になろうと考えるように、この感覚と向き合いながら、人生の何度めかの転機を前に、自分探しのようなことばかり考えている。

ひとつだけ明確なのは、今年が、新しく始めるための決別の年だということ。これはいくつかの占星術や占いで共通して書かれていて、そうかもなあと思ったことなのだけれど、何かを捨てることによって次のステップに向かうタイミングなのだと。いくつかの仕事は辞めたり減らしたりするかもしれないし、あれ、いなくなったかも、なんてことになるかもしれない。ただ、それは僕が別の場所で何かを始めたことのサインなので、そういうものかなと思ってもらえれば。

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