AIと考える Part.1 – 「使える」ケースを求めて

雑記

2025年は本格的にAIを「使いこなす」人たちが増えた年だった。ChatGPTやClaudeといった対話型AIの利用者が拡大する一方で、半導体やデータセンター、電力などのリソースを賄うために、毎月のように新技術が発表された。事業者間の競争が激化することで技術革新が進むのは、決して悪いことではないだろう。その一方で、新しい技術の発表を誇大に宣伝する、いわゆる「驚き屋」の声も多く、結果の出ていない話が先行する場面も少なくなかった。

この記事から何回かに分けて、2025年に僕が実践したAIの活用法を紹介していく。といっても実践的なノウハウ、How toの話ではなく、その活用法の意義といった点を掘り下げるつもりだ。今回はそのイントロダクションとして、そもそもAIは社会や雇用にインパクトを与えるのかといった点について論じてみたい。果たして現在のAIは、言われるほど革命的な技術なのだろうか。

AIはゲームチェンジャーなのか

冒頭に書いたように、AIがすべてを変えてしまうという議論が、2025年も繰り返し提示された。特に注目されたのは、米国テック企業で進むリストラとAIの関係だろう。

Amazonは2025年10月、約1万4000人の人員削減を発表した。日本経済新聞の報道によれば、「米テクノロジー大手では、AI開発への投資を増やす一方でコストの抑制を進める。メタは人間の頭脳をしのぐAIを指す『超知能』を開発するための組織拡大に伴い、22日に他のAI技術者を約600人削減した。マイクロソフトは7月、全体の4%にあたる9000人の削減を決めた」という。

しかし、これを「AIによる雇用の置き換え」と解釈することには注意が必要だ。同紙の別の記事では、コンサル会社カルチャー・パートナーズ最高戦略責任者のジェシカ・クリーゲル氏が「需要減退による緊縮策ではなく、AIがリストラを正当化する新たな理由になっている」と指摘している。つまり、過剰人員を削減するための言い訳である可能性が高いのだ。

さらに、AIによる雇用の置き換えは経営の効率化に関わる問題であって、個々の従業員がどう使いこなすかという話とは別次元の問題だ。テック企業がデスクワークを効率化したからといって、同じことがすべての企業で起きるとは限らない。

実際、米小売り大手ウォルマートは異なるアプローチを取っている。同社は毎年30万人の従業員にリスキリング(学び直し)の機会を提供すると表明した。これは全従業員の15%にあたる。日本経済新聞の報道によれば、「オンラインに販売の主軸が移り、人工知能(AI)導入を進めるなか『単純労働』はなくなると判断した」という。

ただし、この記事も額面通りには受け取れない。同じ記事は「すべての従業員がリスキリングを成功させられるかは不透明だ。従業員間の格差が広がる恐れはある」と続けている。さらに、米求人サイト「インディード」のデータによれば、ウォルマートが専門スキルを持つ従業員に提示する時給は冷蔵技術者で32ドル、空調技術者で33ドルで、単純作業の在庫担当者や荷詰め担当者の約2倍だという。

つまり、AIがあらゆる企業のあらゆる雇用を置き換えるものになるかどうかは、AIの技術水準というより、その企業の経営課題とコア価値が何かということに依存するのだ。AIが導入され、雇用が即座に置き換わるというのは典型的な技術決定論であり、ビジネスや社会の特徴をあまりに単純化していると言わざるを得ない。

人々がAIに期待するもの

では、個人レベルでAIはどう使われているのだろうか。興味深いのは、「話し相手」や「癒やし」といった用途が主流になっているという報告だ。

日本経済新聞の記事では、歌舞伎町のホストの約7割がChatGPTなどの対話型AIを使っているという佐々木チワワのコメントを紹介している。しかも、接客の助言を求めるだけではない。「仕事のつらさや将来への不安を打ち明け、AIの言葉に慰められている」というのだ。2025年はAIができることとして、マルチモーダル処理の水準が上がり、ほぼリアルタイムで会話もできるようになった。Soraのような動画生成プラットフォームも注目されているが、その技術がもっとも求められるのは、「人としているような、でも実際の話し相手のいない会話」なのだ。

もちろん、これは極端な例かもしれない。これだけのことができるようになったのだから、ビジネスの現場での個人ワークにおいても、AIは大きな合理化や効率化といった効果を発揮しているようにも思える。

確かに、NotebookLMによって資料の要約が瞬時に行えるようになったり、それをプレゼンテーション資料にまとめてくれるようになったのは事実だ。最近のアップデートで、エクセルの分析もCopilotに聞きながら進められるようになった。しかし、大事なのは「それで生成したプレゼンで契約が取れた」とか「経理部門のダブルチェックの時間がなくなった」という事実があるかどうかではないか。プレゼン資料を作るのは業務の途中段階で、それが効率化されたからと言って成約に至ったわけではないのに、まだ誰も「AIで作った資料のほうが契約が取れる」といった話をしていないのだ。

それにも関わらず、AIの開発競争は巨大なデータセンターや発電力を必要としており、その投資に見合うだけの利益が生まれなければ、AIブームがバブル化するリスクも指摘されている。読売新聞の竹森俊平氏のコラムでは、投資の「回収先送りは投資家の辛抱を試すが、恐らく辛抱切れの前に電力問題が来る」と警告されている。データセンターは膨大な電力を必要とするが、現在の電力供給体制では、やがて電力供給に支障が出る可能性があるというのだ。

AIに置き換えられない対人サービス労働の人々が、いっときの癒やしを求めてAIに話し相手になってもらうために、莫大な投資が電力になって消えている。この現状を、AI革命と呼んでいいのだろうか。

実用のために使うAI

こんなことを言いながら、実は僕自身は多くのAIサービスに課金している。Gemini、ChatGPT、Claudeといった対話型AIに加えて、Notion AIとMakeも有料サービスを利用している。マクロな「AI革命」が起きるかどうかといったレベルの話を脇に置いて、「どのようにすれば実用的に役立てられるか」という観点で考え、そこに課金するのに見合うだけの価値を見出すことができるなら、AIは十分に「革命的」な技術になりうる。

たとえば僕がNotion AIとMakeを使っているのは、日々収集しているニュース記事のまとめサイトブログ作成を自動化するためだ。具体的には、RSSで取得したニュース記事などをいったんNotionにクリップしておいて、タグ付けとサマライズを自動化するのにNotion AIを利用し、そのデータベースの情報を取得して記事本文を自動生成するのにMakeを利用している。

もともとRSSでの情報収集は続けていたけれど、テレビでのニュース解説の仕事のために、より幅広い分野の一次情報をフォローする必要が出てきたことや、その一方でニュースを読むのに使える時間は減っていることが背景にある。なのでこれは文字通り「仕事を効率化するためにAIを活用した自動化のケース」ということになる。

実は今年はこれ以外にも、Claude Codeを使ったタスク整理、執筆の自動化といった作業や、その前処理用のプラットフォームとしてObsidianを導入するなど、日常のワークフローを大きく見直したところもあった。僕個人のレベルで言えば、「仕事や日常生活を効率化するという結果」に、AIはきちんとコミットしている。

ユースケースの共有が重要だ

こういう実践的な活用法は、「使い始め」の感想はよく見るものの、ある程度運用が完成されてきてからのレポートの方が少ない。試してみたけれどうまくいかなかった話、最初は良かったけれど結局使わなくなった話、そういう「失敗」「見直し」も含めた情報が不足しているのだ。

僕自身も、今年の前半には頻繁に活用していた方法を、後半にはさっぱり使わなくなったということもある。これまでNotionで行っていた作業の一部をObsidianに移行するまでの試行錯誤も、完全に終わったとは言えない。だからこそ、ある時点までの運用結果を元に「このケースではうまくいった」という事実を報告しておくことが大事だと思うのだ。

AIを「社会のゲームチェンジャー」として語ることには、僕は懐疑的だ。少なくとも2025年の時点では、大した変化は起きていない。しかし、個々の課題に対する実用的なツールとしては、確実に使える場面がある。問題は、その「使える場面」を見極めることだろう。

次回以降の記事では、僕が実際に運用しているAI活用法を具体的に紹介していく。AIと「壁打ち」するための効果的な考え方、Claude Codeによる執筆支援、Obsidianを使ったタスクと情報管理。それぞれについて、現時点でどのようなフローが「使えた」のか。その実践的な情報を共有したい。

僕らにとってAIは何を解決するのか。その問いに答えるためには、「これで変わりそうだ」という期待の話ではなく、もっと泥臭い試行錯誤の結果の共有が必要だと思うのだ。

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