「Chaos; Head」と「428」の渋谷

昨年プレイしたゲームでも、色々と印象に残ったものがある中で何度か言及した作品に『Chaos; Head』がある。

「三次元に興味はないよ」と言い切り、基地(ベース)と呼んでいるコンテナハウスで大量の美少女フィギュアに囲まれながら生活する、引きこもり一歩手前の高校2年生、西條拓巳。

彼が住む渋谷では、『ニュージェネレーションの狂気(通称:ニュージェネ)』と呼ばれる連続猟奇殺人事件が発生し、ネットやテレビを日々騒がせていた。

ある日、いつものようにチャットをしている拓巳の前に、『将軍』と名乗る人物が現れる。彼が発言したURLのリンク先にあったものは次のニュージェネ事件を予言するようなグロ画像だった。さらに、翌日、拓巳は、予言された通りの殺され方をした、凄惨な事件現場に遭遇する。そしてその遺体の前には、血まみれの少女――咲畑梨深が立ち尽くしていた。

拓巳の平穏な日々に猟奇事件の影が忍び寄っていた――。

というサイコスリラー仕立ての筋書きとはあまり関係なく、拓巳のVipper丸出しのボキャブラリーと非コミュっぷりがとにかく目立っていた本作、プレイした多くの人が主人公ボイスをオフにするかどうか迷うくらいイライラさせられたはずだ。そんな彼のキャラクターや作品世界との関わりについては、『エクス・ポ』をはじめ何度か書いたのだけれど、それとは別に、本作の中心的な舞台である「渋谷」についても、色々と面白いところがあった。

『エクス・ポ』にも書いたことと関連するけれど、ネトゲオタで人との関わりを避ける拓巳は、学校から近いという理由で神泉の雑居ビルの屋上に独りで住んでいる。この辺、渋谷と神泉の距離感とか、裏道の抜け方を知っている人間にとっては、割とニヤっとするところだ。プレイしていると、センター街からまんだらけを抜けて109の脇から道玄坂へ、というルートで歩いていることがよく分かるし、寄り道をするときだけアニメイトというのもうなずける。要するに拓巳は渋谷という街をオタク的にすり抜けて生きているのだ。

オタク=秋葉原、というテンプレートにとらわれずに「渋谷でドキュンにおびえながらオタ巡りをする主人公」という設定をしただけでも、この作品の厚みはすごく増したと思う。アニメ版ではその辺りがだいぶ薄くなっていて、最後にパンテオンが消滅するのも演出としてどうなんだろうとは思ったけど、リメイク版となるNOAHに期待だろうか。

てなことを考えたのは、年末にわざわざWii本体を借りてきてまで「428」をプレイしていたからだ。ハードが借り物だってこともあって、週末にやりこんでクリアしたからか、「24の世界で踊るシリーズとIWGPを同時進行させました」というストーリーのテンポも楽しめたし、何より本編以外の部分の濃密さも嬉しかったのだけれど、作品の根幹である「渋谷」に関してはかなりいただけない。

「渋谷が舞台である必然性に乏しい」というのは周囲でもよく聞いた感想だし、街を移動するリアリティが希薄すぎる。それこそ『Chaos; Head』で描かれる渋谷と比較すれば一目瞭然だ。パルコの辺りから裏路地のバーや倉庫に抜ける道ってどこだよ、と。もちろんそれも「地元民しか分からない裏道」という設定なのかもしれないけど、だとすれれば他のキャラクターに出くわしたりしてはいけないはずだし、そもそも「街を逃げ回る」というシナリオの根本がおかしなことになってしまう。

おそらくここで「渋谷」と呼ばれているのは、メディアを通じてしかその街を知らない人がもっとも豊かに描き出すことのできる、想像上の「シブヤ」なのだと思う。だからダメなのではない。そのシブヤののっぺりとしたイメージが、複数の人々の人生が交差することで物語に豊かさを生み出すというマルチシナリオが売りの本作にとって、致命的な貧困になってしまうからだ。

よほどの事情がない限り、僕らは渋谷の路上で同じ人と一日に何度も出会わないし、たとえすれ違っていたとしても、拓巳のように、できる限り目立たないようにしながら「自分だけの渋谷のポイント」をクルーズしてしまうかもしれない。そういう渋谷なのに、ある人と別の人の人生が必然的に交錯してしまうという状況が描けなければ、その出会いは奇跡でも何でもないんじゃないだろうか。

街を行き交う人々の存在は所詮はノイズだとしても、ノイズであるからこそ意味がある。そう主張していたのは『すばらしきこのせかい』だ。『Chaos; Head』はそのノイズの中を自分なりに生きる主人公の目線がはっきりしていた点がよかったと思う。都市は単一のコンテンツに回収できるようなペラいものであるより、そうしたノイズにまみれている方がいいんじゃないかと、最近はそう思っている。

CHAOS;HEAD
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