2025年の音楽を振り返る

雑記

年末恒例の、その年に聴いた音楽を振り返る記事ということであらためて今年の曲を聴き返していたのだけど、一言で表すと「新しい動きの芽生え」という感じだった。というのも、これから挙げるような頭ひとつ抜けた楽曲、あるいはアルバムとまではいかないものの、「今後に注目」とか「この曲だけでは判断できないけどちょっと気になる」みたいなアーティスト、楽曲がいくつもあって、新時代が始まってるなあという印象が強かったからだ。

考えてみればコロナ禍で一回平成後期のバンドブームの流れが切れて、その後に音楽を始めた世代ももう20代。SNSでサビがバズってから曲を仕上げるといった小回りのきく制作スタイルも一般化しているし、そもそも同期(生演奏以外の音源を演奏に重ねて使用すること)が特別なことではなくなっている。一方で、ベテラン勢も精力的に活動していて、今年は昨年に続いてトリビュート企画も多かったし、その中でもRADWIMPSのトリビュート「Dear Jubilee」なんかはリリース直後から周囲の(そこまでバンドに詳しくない)学生でも軒並み聴いていたので、10年、20年と続けているアーティストの存在感も強いなと感じる。

感じるのは、とにかくフェスの規模が大きくなりすぎているということだろうか。夏フェスなんかは信じられないほどの酷暑で体力の限界という感じなのに、どのステージも動けないくらいの人。かつてよりはオペレーションも合理化されているのだろうけど、規模的に限界という印象だ。完全な私見だけど、コロナ禍でのイベントの中断と、SNSなんかを通じて出回る「正しいフェスのノリ方」みたいなものを一回体験してみたいという層が流入したこと、また出演者がいわゆるバンドに限らないところに広がっていることなどの複数の要因で、新規のお客さんが大量に流れ込んでいるという気がする(もちろん、僕らのような上の世代が抜けていないのもある)。

というわけでシーン全体は過熱気味かなという気もするのだけど、その分だけ心に残る楽曲も多かった。思いついた順に紹介していきたい。

突き抜けるヴォーカル

今年は特にヴォーカルのうまい楽曲が際立ったという気がする。抜群の歌唱力だったのはyutori。楽曲としてもここまで突き抜けた疾走感だったり、それを支えるリズムの押し引きだったり、かなりレベルの高いところに挑戦してきたなという印象だった。

方向性は違うのだけどAoooの「Yankeee」は、石野理子の声を完璧にプロデュースしたすりぃの大勝利という感じ。この2曲で今年のある面は代表できるなと思った。

羊文学のアルバム『Don’t Lough It Off』は、ソングライティングの安定度がすごい。「声」のようなエモーショナルなミドルテンポのロックから、「Doll」のようなアップテンポまで幅広いだけでなく、これがライブセットになると去年、一昨年と同じような流れを新曲で構成できる仕掛けになっていて、あらためてソングライターとしての塩塚モエカの天才ぶりが際立つ。

バンドではないけどあのちゃんの「この世界に二人だけ」は、曲としてはクリープハイプっぽいところもありつつ、演奏はリーガルリリー。イントロのチョーキングの時点でスケールからちょっと外したアンニュイなフレーズになっていて、恐らくたかはしほのかさんの演奏なのかなと思うのだけど、曲全体のイメージを一音で引っ張れるのはほんとうにすごいと思った。

セントチヒロ・チッチのソロプロジェクトCENTの「yummy goodday」も、上に突き抜けるイメージのあるヴォーカル。PEDROに続いて元BiSH勢の活躍を観られるのは嬉しいこと。

バンドに戻ると昨年も紹介したomeme tentenの1stアルバムは、ここまでのバンドの集大成かつスタート地点という感じですごく満足度が高いのだけど、Vo,gtの灯がやっぱり気持ちよく突き抜けてくるスタイルの歌唱で、こういう流れってきっと続くのだろうなと感じている。

そして、そんなタイプの歌い方とは真逆の、どこか抑制的な声でエモーショナルに歌うのが、のんさんの「Renaratte」。いやでも好きじゃん僕らこういうの。ライブで手拍子して拳あげたいじゃん。そんな何回でも聴きたくなる楽曲だった。

あと、ソングライターとして今年外せないのはやっぱり乃紫の「1000日間」。SNSバズみたいな文脈で語られがちだけど、昨年も書いた通りどこか厭世的で露悪的な、強いて言うなら岡崎京子とかそっちに近い世界観の曲が魅力の人だと思っている。

このパートで最後に紹介するのは、さとう。の「ネバーランドより」。この数年、一番ライブを観ている人だと思うのだけど、この曲のリリース直前に行われた大阪ワンマンで初披露された際には、会場中が涙に包まれていた。もちろん僕も号泣だったし、この記事のために聴き返してまた泣いてる。来年は2ndアルバムのリリースも決まっていて、いよいよブレイクが期待される。

シューゲイザー、ポストロック、ポスト歌謡

気を取り直して次に行こう。平成の頃からジャパニーズシューゲイザーは定番のジャンルみたいになっているけど、どこか「昔のあの有名なバンド」の枠を超えられなかった気がする。ところが今年は、kurayamisakaとiVyというど真ん中のバンドが、立て続けに注目を集めた。iVyなんか10代が注目するキーワードランキングに登場して、居並ぶインフルエンサーの間で異彩を放っていた。

オルタナティブでいうとSpotifyでもフィーチャーされたりと話題の國の1stアルバム。潰れきったファズサウンドとクリアなヴォーカルの組み合わせは、それこそ平成の下北沢を思い出させてくれる。

それから、しろつめ備忘録のEP「シュノーケル」もすごくよくて、羊文学フォロワーという印象もありつつ、もともとはソロで弾き語りをしていたところからバンドへの転向ということらしい。いまからバンドを始めるというときに、こういう3ピースのスタイルが定着しているのだろうなと思わされる。

一方で、ポストロックというか、単なる「ロックとは違うバンドサウンド」というのではなく、より実験的な側面だったり、あるいはバンドという「合奏形態」の可能性を追求したりするような広がりもあったと思う。というわけで君島大空の「WEYK」は挙げるしかないのだけど、これは本当にライブで聴きたいなあ。

ポストロック方向でいうとLaura day romanceの『合歓る』は、最初に聴いたときはそこまで感じなかったのだけど、ライブでのシンセの使い方とかよりポストロック感が強くて一気に引き込まれた。そう思ってこの曲のエレピとか聴くと、これはポストロック的なアプローチだったのかなという気持ちになる。

あとは「全員が登山するバンド」というちょっと変化球な紹介からは想像もできないくらい美しいメロディと演奏を聴かせてくれるスーパー登山部。サーキットで初めてライブを見たのだけど、完成度が高すぎてさすがの実力派と唸らされた。

若手で言うと、今年1st EPをリリースした京都のCRAZY BLUES、今年から活動を開始した福岡のPixie Monsterも期待株。これからバンドを始める人の目標とする形態って、いわゆる「ロック」的なアプローチだけでなく、バンドとしての存在感もありつつ、どこか内省的な要素も出てくるのかもしれない。

あと期待という点では百円音盤も外せない。目指しているのが「平成の古き良きJ-POP」と言われると、そうですよね、もう令和もだいぶたちますもんね、、、とか思ってしまうけど、この曲を最初に聴いたとき、「めっちゃFMでかかってそう!」っていう懐かしい気持ちになったのは疑いようもない事実で、それが令和のアプローチで出てくるあたり、なんというかポストロックならぬポスト歌謡なのかなと感じた。

ロックから拡散する世界

さすがに息切れしてきたのであとは駆け足の紹介になるけど、個人的にはthe engyが「Night Kids」でバズったのは嬉しかった。実はVaundyの「灯火」を初めて聴いたとき「え、the engyの新曲?」と思ったくらいには昔から好きだったので、こういう音楽が世界にあるんだぜ!って声を大にして言いたい。

若いながらすっごく器用で、一曲一曲の完成度が高いというか、まったく破綻のないサウンドを聴かせてくれるのは、今年ミニアルバムもリリースしたLavt。アジカンで音楽を始めたというけれど、楽曲の幅はしっかりポップロックだしリズムも多様。ツアーもすべてソールドしているそうなので、次はタイアップを含めたメディア展開とかだろうなあと期待している。

そして今年『ゴースト』がとにかく刺さったamazarashi。アルバムにも収録されている「痛覚」のカップリングだったこの曲は、何度聴いてもamazarashiのamazarashiたるゆえんを突きつけられるし、いったいamazarashi以外に誰が歌えるんだこの曲と思う。本当に何度でも「絶対になれないのになりたくてしょうがない存在」として僕の前に現れるな。

アルバムで言うとCaravanの『HOMEWORK #2』もよかったなあ。というかもう20年以上、なんで歌声も楽曲も見た目も変わらないんだこのひとは。アルバム5曲目の「Saigon Symphony」のサビで「幸せは一つじゃないだろう 正解は一つじゃないだろう」って歌われるフレーズを何度も何度も繰り返して、こんな風に人の心に残れたらどれだけ幸せだろうと思ったのだった。

そういう意味では朝ドラの主題歌になったハンバートハンバートのこの曲。リリース前からうるうるしていたのが、リリース日に聴いたら号泣で、その日のうちにコピーしたという。「日に日に世界が悪くなる」「夕日がとても綺麗だね/野垂れ死ぬかもしれないね」という2番の歌詞が、本当に世界が悪くなる前の時代の歌だったなんて言われない未来にしたい。

最後は今年も自分の曲。昨年にアルバムをリリースして、今年はシングルを2曲出して、なんかこう自分の中での文法というか、こういう風に制作って進めればいいのかと感じた年だったな。

そんで今年も次の曲は準備が進んでいて、ちょっとお仕事の関係で楽曲の詰めはまだ先になりそうなのだけど、来年中には絶対リリースするので(誰も期待してないのは知ってて言うけど)ご期待ください。

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