居場所としてのモール

091030

大学でのシンポジウムの翌日は、テレビ番組の収録のため広島へ。番組のディレクターさんとアナウンサーさんはずっとLifeを聞いてくれていたそうで、つくづくメディア関係の方に聞かれている番組だなと実感。まあ、相変わらずテレビの仕事は苦手なのだけど、今回はとてもいい仕事になったと思う。地域活性化がテーマで、色んな取り組みをされている方ともお会いできるし。

で、せっかく広島まで来たのだから、ということでアウトレットモールにも立ち寄る。広島駅からバスに乗ったのだけれど、広島西飛行場へと続く道は、埋め立て地に入った辺りから道が狭くなって、そこをモール方面へ向かうクルマが埋め尽くす大渋滞。日曜日のお昼から、たくさんの家族連れがモールに押しかけているのだ。

埋め立て地から瀬戸内海を臨む場所に位置するアウトレットモール「マリーナホップ」は、手元の資料によると開業が2005年、運営主体は日本初のアウトレットモール「リズム」の現在の運営事業者である丹青モールマネージメント。駐車場収容台数は約2600台とかなり規模が大きいのだが、バスから眺める限りほとんど埋まっていたように見えた。ちょうどお昼時で、飲食店はどこも行列。一番並んでいたのがファストフードの王者マクドナルドだったのはちょっとした皮肉だった。

ここでも人を集めているのはミニ遊園地。かわいらしい観覧車と、一瞬にして終わってしまう長さのジェットコースター。こじんまりとしたアミューズメント施設は、それだけを目的にこの場所に来るには決してコストパフォーマンスがいいとは言えない。それなのに、マクドナルドを出た家族連れがまず向かうのはアミューズメントなのだ。

渋滞のせいで時間に余裕がなかったので、全体をざっと見て回ることしかできなかったのだけれど、これほど人が集まっているにもかかわらず、意外に店舗に人が入っていない。地方アウトレットモールの場合、空き店舗もかなりの率で存在するのだが、マリーナホップでは空き店舗に自販機などを置いて休憩コーナーに改装していた。いつ埋まるとも知れない「Coming Soon!」よりはマシな演出だと思うけど、それでもどちらかというとお客さんはモールの「街路」で子どもを遊ばせたり、単にぶらぶらしたりしているようだった。

こうした状態がレギュラーなものなのかどうかは、ちょっと覗いただけの僕には分からない。でも空間として考えたとき、この感じは今まで見てきたモールの中でも随分ユニークだなと思った。成功しているとされるMOP(三井アウトレットパーク)の場合、確かにモールの通路も店舗もにぎわっているし、フードコートや通路のベンチでくつろぐ家族連れを見かけることもある。けれどそれはいわば「買い物中の休憩」なのであって、言い換えれば、非日常体験の中の小休止なのだ。

けれど、このモールでくつろぐ人たちは、どうも僕の印象では、何を買うわけでもないけど居場所感を味わう――消費ではなく実存的な快楽を得る――ためだけにやって来ているような、そんな風に見えた。というか考えてみれば、そちらの方が公共空間としては健全なあり方なのかもしれない。コンビニで何を買うともなく立ち読みして時間を潰したり、大学のキャンパスでだべったり。そこにわざわざクルマ出して来る必要があるのかどうかはともかく、なんとない居心地の良さを感じたのだった。

こういうのは、雨が降っているとか、気温が低いとか、そういうことであっさりと失われてしまう条件であるわけで、たまたまタイミングが良かったのだと思うけど、行楽地なんて昔からそういうものだったのだと思えば、商空間でもあり、公共空間でもあるような、そういう場所のことについて考えるには、いいヒントになったんじゃないかな。

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