5月のいただきもの

雑記

今月はいただきものと、新刊が数点。

不確実性の時代 (講談社学術文庫)
ガルブレイス・ジョン・K
講談社
売り上げランキング: 86241

訳者の斎藤先生よりいただきました。ガルブレイスのBBCテレビレクチャーの内容をまとめたもの。イギリス人らしい皮肉の効いた語りもそうだけど、この水準で学者がテレビ講義をできるってことがまずすごいなと思う。

戦後日本スタディーズ2
戦後日本スタディーズ2

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紀伊國屋書店
売り上げランキング: 6697

版元からいただきました。60~70年代がテーマ。これで既刊の80~90年代、第一巻で出るはずの40~50年代を合わせれば、ゼミでも十分に使える「戦後史」の本になるはずだ。個別には色々と思うところはあるけれど、やはり消費社会への転換点としての70年代(昭和40年代)が、いま戦後史で一番面白いところだと思う。僕は歴史研究には手を出すつもりはないけれど、ひとつの教養として、この時代の社会変動を押さえておくことは、とても大事であるはずだ。

新聞学
新聞学

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日本評論社
売り上げランキング: 192676

数年ぶりに改訂されたマスコミ論の教科書。僕もネットなどの新しいメディアとジャーナリズムとの関わりについて書かせていただいている。僕のところはともかく、他の方々の書かれた章が、最新の議論を踏まえたものになっていてとても勉強になる一冊。

思想地図〈vol.3〉特集・アーキテクチャ (NHKブックス別巻)
日本放送出版協会
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いよいよ出ました思想地図。薄くなった分お値段も下がり、表紙もおされに。だからどうってわけではないけど、僕も特集のテーマ「アーキテクチャ」について、職場における「やりがいの搾取」のメカニズムを考える論考を寄せている。そこで論じたのは、やりがいの搾取には、悪徳な経営者を問題化する以上の論点が含まれること、そしてそのメカニズムとは、人の自発性と可能性を引き出し、労働者自身がその可能性に気づくように働きかけるものだということ。その点を踏まえないと、アーキテクチャとしての職場環境の設計を論じる際の深度って、すごく浅いものになっちゃうんじゃないだろうか、と、まあそんなことを偉そうに書いている。その他、多様な論点出しの場として、とても興味深い記述が多数。特に、「郊外」の原点である阪急沿線、旧箕面有馬電気軌道の開発した地域を拠点にしているいまだからこそ、原・北田・東鼎談はじっくり読み込んで考えたいと思った。

日本を変える「知」
日本を変える「知」

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芹沢 一也 荻上 チキ
飯田 泰之 鈴木 謙介 橋本 努 本田 由紀 吉田 徹
光文社
売り上げランキング: 2189

シノドスのセミナーを書籍化した一冊。僕も再帰的近代化理論をベースにした日本社会分析で、一章担当している。単なる分析だけでなく、時代診断を元にしたある観点からの処方箋の提示という点では、コンパクトに読めるものになるように心がけたつもり。というか、実際にセミナーの模様を収録したメールマガジンの原稿を元に、ほぼ書き下ろしで表現などを改めたので、メルマガが読みにくかったという人も是非手にとって欲しい。

革命待望!―1968年がくれる未来
すが 秀実 鈴木 謙介 荻上 チキ 橋本 努 芹沢 一也
ポプラ社
売り上げランキング: 21162

先月から今月にかけては新刊ラッシュだったのだけれど、こちらもシノドスの公開シンポジウムを元に、新たに収録した鼎談を加えた本。68年の歴史を振り返ると言うより、そこから生まれたモードとしての「クリエイティビティ」をめぐって、橋本さんと僕の微妙にずれる立場が浮き彫りになっていると思う。「クリエイティブであることは、マルクスの理想とした世界。しかしその理想の前で人は貧乏になることを覚悟しなければいけない」と考える橋本さんに対して僕は、「クリエイティビティが資本主義と手を結ぶことで、個人の実存的自由と経済的自由が両立する可能性を追求するべき」という立場を採っている。シンポジウムでもちょっとだけ発言した「資本主義と妥協するアナーキズム」の理念と、その実践といったところか。タイトルの印象で決めつけずに、中身をちゃんと読んでもらいたい。

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