Deep Breath Project 「Parallel Happiness」

楽曲

2014年の新曲「Parallel Happiness」です。

※2014年12月28日の放送より

2014年という年は、世の中的にも新しいイベントが登場したり、自分にとっても初めて夏フェスに参加したりテーマパークに行ってみたり、ホントに数年ぶりに「アガる」場所に行くことが多かったなと思います。むろん、そういう場所において音楽というのはとても大事な役割を果たしていて、それは主役でないとしても、音響効果としてある種の世界観を担うものなわけです。

ただその一方で、その世界観というか、この場所において音楽って何なんだろうと思うことも多くて、たとえばパーティーソングとしてEDMという、すごくポップなプログレッシブ・ハウスの要素を取り入れた音楽が流行しているわけですが、そこで「アガる」ってなんなんだろうと。

あるいは、この番組でも何度もそうしたイベント的なものを取り上げましたけど、そこでずっと気になっていた、ある種の多幸感というか、「幸せの前で思考停止する感覚」や、それがソーシャルメディアで表出されていく様も気になるところでした。どうしてこんなに必至に、自分が幸せであるということに固執するのだろうか、と。なんとしても幸せだって言わないと幸せでないことになってしまうのだろうか、と。

それを分析の対象としてではなく、音楽という表現手段をもった人間として考えた時、ダンスミュージックの体裁を取りながらも、思考停止の多幸感とは違う幸福感を込めることができないか、そういうことを考えていました。毎年、年末の放送では自分の曲をかけさせてもらうというワガママを通していますけど、今年はそんなわけで、幸福について考えた曲を、一曲目に流したいと思います。

とはいえ僕はプロのミュージシャンというわけでもないので、完成度では勝負にならんわけですが、代わりに最新のテクノロジーを導入しながら、いま技術的にはここまでできるんだよっていうことを追求するところで頑張ろうと思ってます。そんなわけで去年はボーカロイドの進化がテーマだったんですけど、今年はモバイル環境の充実がテーマになってます。

もう音楽の世界においては、コンピューターで作曲をするDTMの普及によって、ハードとソフトの価格が低下するという現象が一貫して起きています。その中でもいまデジタル作曲の分野でアツいのはiPadをはじめとするタブレット端末でして、たとえばhiphopの世界ではデファクトだったパッド付きサンプラーのMPC2000とほぼ同様か、場合によってはそれ以上の機能をもったiMPC Proというアプリなんか1300円。ハードの時代の100分の1以下の価格なわけですね。

これはもう、データというのは限りなくタダに近づくという話で、だとすると、タダのものを使って「それっぽい」ものを作るコストも極限まで下がる。そうすると後は、楽器を弾く技術などのフィジカルな要素か、ソングライティングのスキル、才能が問われることになるわけですね。僕はどっちも大したことないですけど、とりあえず今年はひとつの制約として、iPadだけで作曲してみようということになりました。結局、ミックスとマスタリングはPC上でやったわけですけど、ギターのエフェクトにしても音源にしても、もうタブレット上で完結するレベルのものになってしまっていることは伝わるかなと。

というわけで長くなりましたけど、今日の一曲目は、僕が勝手に名乗っている一人ユニット「Deep Breath Project」の2014年唯一の新曲です。聴いてください。「Parallel Happiness」。

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