2018年の音楽を振り返る

年末恒例になっている、その年の音楽を振り返る記事。この数年に比べて今年はあまりライブには行けなかったものの、音源としてはとにかくバラエティ豊かで、心に残る曲が多かった年だった。いわゆる「当たり年」なんて言い方はしたくないんだけど、純粋に楽曲としての完成度、ポピュラリティの高い作品にたくさん出会えたのはとても幸福なことだった。

世界に相対する強さ

何から挙げるべきか悩ましいけど、やはり今年の注目トピックとしてはあいみょんのブレイクだろう。「満月の夜なら」「マリーゴールド」「今夜このまま」とヒットソングを立て続けにリリースし、特に「マリーゴールド」はしばらくスタンダードソングとして人の記憶に残る曲になるだろうなと思った。でも今年の一曲と言われると、映画の主題歌にもなったこの曲だろう。

シン&ふうか「体の芯からまだ燃えているんだ」

「ロック」と繰り返す歌詞からは「君はロックを聴かない」へのセルフアンサーとも取れるメッセージを感じるけれど、それ以上に「泣き言叫んで/ヒロイン気取りで/世界を変えてくつもりもない」と、ある部分ではロックの反体制精神に異を唱えるスタンスに、強い「2018年ぽさ」を感じる。それは女王蜂のアヴちゃんが、「もうカッコつけてくしかないじゃん」と歌うときに感じる、世界に相対する自己という存在の強さに通じるものがある。

女王蜂「HALF」

自分が世界の中に放り出されて、それでも世界と向き合っていられる。そういう存在を、たぶん人びとは求めている。誰かに媚びたり靡いたりしない、そういう人の歌を。

魂に流れるメロディ

もうひとつ、あいみょんのブレイクに絡んで感じていたのが、日本のフォークから続く「メロディセンス」の復権だ。というかもっとはっきり言えば「吉田拓郎力」だ。そのあたりのトレンドを絶対に見逃さない秋元康が、明らかに字余りの歌詞を書いてきた、STU48「暗闇」なんか、もう「そのまま」でしかない。

STU48「暗闇」

そんな今年、ほんとうに出会えてよかったと心から感じた曲が、村上紗由里「遠雷」。特に言葉を尽くして解説をする必要のないくらい、ストレートで、シンプルで、真っ直ぐで、そして普遍的な歌だと思う。

村上紗由里「遠雷」

アーバンポップは次世代へ

そうしたストレートな、音楽的にも凝ったところのないフォークっぽい曲がヒットする一方、この数年のトレンドであるシティポップ(80年代からのトレンドと区別するために、あえてアーバンポップと呼びたいのだけれど)にも、次々とニューカマーが登場した。

FIVE NEW OLD「Sunshine」

Attractions「Leilah」

Ghost like girlfriend「(want) like (lover)」

こうしたバンドの特徴として、非東京、けれど音はグローバルというか、いい意味で「日本製」の音楽ではないというところがある。考えてみれば2000年代からUNCHAINのようなバンドはちゃんといたのに、何周もしてようやく時代とリンクしてくるのが面白い。ほんとに今年の曲もよかったもんなあ。

UNCHAIN「Libyan Glass」

バンドではないんだけど、ベテランのこういうサウンドが同じフィールドに並んできたり、

mabanua「Heartbreak at Dawn」

逆に若手バンドの音がアーバンに寄ってきているように思えるのも興味深いところ。

LAMP IN TERREN「Walter Lily」

antigraph「昨宵に溶ける」

ベテラン勢も強かった

前々から好きだったベテランの人たちが、今年「おっ」となる曲を出してきたのも嬉しかったニュース。

tacica「煌々」

Spangle call Lilli line「mio」

MASS OF THE FERMENTING DREGS「New Order」

SCANDAL「プラットホームシンドローム」

もうtacicaはかっこよすぎて、人って自分のなれないものに憧れるんだなあと思うしSpangleもマスドレも全然変わってないし、SCANDALは今年たまたま別の曲で彼女たちの演奏をコピーする機会があって、やっぱこういうのが好きだわって思ったし、ほんとこれだけでも胸熱な年だった。

「バンド」の新しい定義

そういえば今年は米津玄師の大ブレイクイヤーでもあったのだけど、ボカロP出身だったり、そこから派生したニコニコ的な文化圏から登場したサウンドの完成度を高めたような楽曲が次々と出てきて、ああ、いまどきの「バンド」を始める子たちって、こういうところから楽器始めたりしそうとか思ったのも記憶に残ったところ。

ヨルシカ「負け犬にアンコールはいらない」

ずっと真夜中でいいのに「ヒューマノイド」

三月のパンタシア「青春なんていらないわ」

純粋に、今年聴けてよかったもの

羊文学「ドラマ」

世界観を含めて、これは次世代だわと思ったバンドが羊文学だったなあ。カレッジインディー的なテイストもありながら、メロディにせよ演奏にせよ、安定感がすごい。

amazarashi「月曜日」

「月曜日の友達」の主題歌なんだけど、amazarashiがamazarashiであったことの意義を示した記念碑的作品になったと思う。

コレサワ「 プラネタリウムに憧れた」

これまでのコレサワの延長ではあるんだけど、アルバムを通してすごくよかった中でも、一番泣いたのがこの曲。

まとめ

ライブにはあまり行ってないというものの、たとえばずっと追いかけてたHalo at 四畳半のメジャーデビューだとか、RUSH BALLでBRAHMANの「今夜」(細美武士とのデュエット!)で大号泣したとか、なんだかんだで大事なところは押さえていたように思う2018年。パーソナルな出来事としてはほんっとに久しぶりにバンドでライブしたり、その過程でいままで気づかなかった音作りの大事さに気づくことができたり、音楽的にすごく実りの多い1年だった。願わくば来年も、そんな年でありますように。