雑記20190203

白河三兎『田嶋春にはなりたくない』読了。「大学生を主人公にした小説って最近ないよね」「大抵のことは高校生が主人公でも描けるし、大学生の方が生々しいからじゃない」って話をしたばかりだったので、あるじゃん、最近の大学生の小説、という感じ。

主人公は、曲がったことが嫌いだが空気を読むことができず周囲から浮いている田嶋春、通称タージ。物語は、タージの所属するサークルのメンバーやその関係者の視点から描かれる。彼ら彼女らの多くはタージを苦手だと思っていて、できる限り関わらないようにしているのだが、それぞれの抱えた事情がこじれていく中、タージとの関係性を考え直すきっかけを得ていく。

形式的には、叙述トリックを応用した短編集ということになる。基本に忠実だし、テンポもいいから読んでいて飽きない。タージのキャラクターについては、最初こそ好き嫌いが分かれるだろうけれど、読み通してしまえば、どこか惹かれる部分もあるはずだ。

確かに、タージの真っ直ぐなように見えてどこかズレたコミュニケーションは、端的にウザい。どんな大学生の集団にいても「勘弁してくれよ」「もう少し空気を読んでくれよ」と思うはずだ。でも物語を読み進めるうちに明らかになってくるのは、そんな空気を読めないタージの周囲にいる「空気を読める」大学生たちは、それほど褒められる存在なのかということだ。

大学デビューに際して、無難に、いい方にも悪い方にも目立たないポジションを取ろうと戦略を立てる1年生。恋人がいるというステータス欲しさになんとなく交際を始める2年生。上下のポジションを気にしながら、サークルの幹部とのいい距離を模索する3年生。どいつもこいつも、空気を読むとか人間関係を大事にすると言いつつ、人には話さない秘密を抱え、上辺だけの仲良しサークルを演じ、積極的に何かを担うことから絶妙な距離を取ることを「空気を読む」とか言ってるだけだ。

タージの空気の読めなさは、いわばその「微妙なバランスの関係」に波風を立てるという種類のものだ。ポイントは、積極的にその関係を崩壊させたり、無理にメンバーの本音を明かさせたりはしないということ。波風を立てておけば、本心ではサークルの欺瞞的な関係に飽き飽きしていた人たちが、自分から「あるべき姿」に向けて動き出す。タージ自身の内面が地の文で語られないことも含め、「よい波風のたて方」について考えさせられる作品だった。物語は、いつも出会うタイミングなんだなと実感した。

一流私大の法学部に在籍する女子大生「田嶋春(たじまはる)」、通称タージ。曲がったことが大嫌いで、ルールを守らない人間のことは許せない。そのうえ空気は、まったく読まない。もちろん、友達もいない。そんなタージが突撃した「青春