新刊案内『誰もが時間を買っている』

12月2日から、新刊『誰もが時間を買っている』が発売になります。

教育という仕事に携わるようになってから初めての、ゼミでの研究を書籍化した本になります。社会学的な考察や来たるべき社会の理念というよりは、直近のビジネストレンドにフォーカスした内容になっています。

以下に、本書の冒頭の部分をご紹介します。

理解されていない「時間と消費」の関係

「要点を短くまとめて、結論から話す」
「会議の時間はできる限り短縮する」

こうした話を聞くことが増えました。いずれもビジネスの世界の話です。
確かに、面白くもない話をだらだらと聞かされるのは時間のムダでしょう。「働き方改革」が叫ばれる中、生産性の低い時間を減らしていくことは、どんな企業においても急務であるように思います。

では、こういう風に言われたらどうでしょう。

「夫婦の会話は、結論からまとめて要件のみにとどめなければいけない」
「デートの時間は限りなく短くできるように、効率的に進めるべきだ」

こちらは、あまり共感を得ることはなさそうです。
次のような場合はどう思いますか。

「テーマパークを回る時間を2時間短縮して、効率的に遊ぶことができた」
「映画を1・5倍速で視聴したので、30分早く観終えることができた」

もやもやするというか、「それっていいことなのかな」と感じた人も多いのではないかと思います。
仕事の時間は効率的に使いたいけれど、プライベートの時間や遊びの時間は、できることなら長く、ときに非効率になっても構わない。そういうふうに考えるのが普通の感覚でしょう。
いま、サービス業だけでなく、ものづくりの世界においても「体験」や「感動」を売りにする商品が注目を集めるようになっています。こうした傾向は「コト消費」と言われ、経済の活性化やインバウンド向けマーケティングの鍵を握ると目されています。

こうした話の中で、まったく扱われていないポイントがあります。
それが「どうやって消費者に時間を使ってもらうか」という点です。

体験や感動は、効率的な時間の使い方と相反するものです。むしろ非効率であるからこそじっくりと体験できて、感動を得られるということだってあるはずです。なのに、その「時間」をどのように設計すればいいのかということについて語っている人は、ほとんどいないように見えます。

私は大学で消費社会論を研究するかたわら、複数の企業からマーケティングや商品開発についてのアドバイスを求められる形で、実務の方々と関わるようなお仕事をしています。そうした中で、この「時間」にまつわる研究が、多くの方々のヒントになるのではないかと感じるようになりました。

この本では、そんな「時間と消費」について、エッセンスになる部分をまとめてご紹介しています。具体的な事例だけでなく、様々な分野の方に応用していただけるように、理論的な面についても書いていますが、できる限り現実の場面と関わるように論じることを心がけました。

いまだきちんと理解されていない「時間と消費」の関係。本書を読めば、そのカンどころが掴めるのではないかと思います。

注意:どこで買えるのか

実は今回の本は、一般の書店には流通しません。全国のセブン-イレブンの店舗と、オムニセブンでの取り扱いのみになります。書籍の出版や流通には様々な課題や議論がありますが、自分としてもこうしたトライアルがどんな結果をもたらすのかに関心があります。

おそらく書籍というのはそれ単体で完結するだけでなく、その外側に広がっていくものになるかどうかを問われているのだと思います。たとば今回の「時間と消費」というテーマについては、7月には博報堂メディア環境研究所の「メディア生活フォーラム」において説明していたのですが、既に様々な分野の方からリアクションをいただいています。これまでのような社会についての理念的な考察のお仕事はもちろん、価値共創のきっかけとしての書籍出版の可能性も広げていければと思っています。